高所から見下ろす日方泊岬灯台が美しい、灯台は船だけでなく、周囲で暮らす人々も見守っている

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

到達:2025年10月
難易度:■□□□(入門)

日方泊岬灯台(ひかたとまりみさきとうだい、北海道上ノ国町)は、高所から見下ろした姿が美しい。

北海道南部にある大きな渡島半島、その南西部分にはさらに松前半島という名前も付いていて、松前や江差などの町がある。そのほぼ最西端にあるのが日方泊岬灯台だ。

渡島半島全体の最西端は、もう少し北の尾花岬(下記の地図の上端あたり)と思われる。

(国土地理院)

渡島半島の西側は、本州と小樽などを結ぶ航路が通っていたためか、多くの灯台がある。日方泊岬灯台以外に奥尻島に2つ、渡島大島に1つ、渡島小島に1つある。この海域は灯台できちんと囲まれている感じがある。

松前から江差を目指し、国道228号を海岸沿いに北上していくと、小砂子(ちいさご)トンネルがある。そのトンネルの手前で小砂子集落に向かう道を左折しようとすると、もう日方泊岬灯台が見えてくる。

(国土地理院)

この付近、国道は海抜60~70mを通っているが、灯台があるのは海抜30mぐらいなので、だいぶ低い位置に見える。

くだり道を進んでいけば、近くに灯台が見える。左は灯台を回り込み、このまま漁港までくだっていく道なので、ここで右に曲がる。

そして、消防団の建物を左に曲がると…。

日方泊岬灯台が現れた。

塗装は新しく、灯火はLEDになっているようだ。眼前に広がる海に向け光を照らす力強さのある姿だ。

きちんとメンテナンスされている灯台本体に対し、敷地を囲む柵は建設した当時のままのようだ。

平らな空き地は割と広いのだが、敷地を囲む柵はその一部分だけ。初点灯が1971年11月なので、もう退息所(官舎)の必要はなかったのだろう。

灯台をあとにすると、小砂子集落と、漁港が見えた。

大きな町から離れ、山と海に囲まれたこういう場所でも、人々が家を作り、港を造って暮らしている(人口は減っているだろうが)。ここに集落を作った人たちのたくましさを感じた。

国道228号に戻るために坂をのぼっていく。灯台は海を行く船だけではなく、周囲で暮らす人々も見守っている。そんなふうに思える景色が広がっていた。

ところで、日方泊(ひかたとまり)という岬の名前はどこから来たんだろう、と気になっていた。集落の名前は小砂子(ちいさご)とまったく違う。

日方泊岬の沖合にある渡島大島(松前大島)にも、日方泊や日方泊岬という地名があるから、向き合う場所同士で同じ名前を付けたのかとも思ったが、それだけではしっくりこない。

(国土地理院)

アイヌ語地名を調べているサイト「Bojan International」(https://www.bojan.net/)に「ヒカタトマリ」の記述があった。

「pikata-tomari」は南西風・泊地であるという。つまり、南西の風が吹いたときに船が避難する停泊地ということのようだ。

改めて灯台のある日方泊岬を見てみると、漁港がある場所は、確かに南西風を岬がさえぎってくれそうだ。この地形の特性から、人々が住むようになったのかもしれない。

上記の渡島大島の場合は、日方泊や日方泊岬が島の北東にあって、島が南西風をさえぎってくれるのだろう。よく見れば島の西に「東風泊」、島の南に「北風泊」「北風泊岬」もある。

そのほか、「日方岬」「日方泊川」が増毛町に、「(旧)日方泊村」がせたな町にあるなど、「ヒカタトマリ」は一般名詞のように使われていたようだ。

 

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