ナギヒコの灯台到達記:瀬戸内海東端
到達:2024年4月~2026年1月
“瀬戸内海”はどこからどこまでか、瀬戸内海と外海(太平洋、日本海)の境界はどこか、ご存じだろうか。
瀬戸内海の範囲は、いくつかの法律や政令(施行令)などによって規定されている。場所はそれぞれ異なることもあるが、ほとんどの場合、境界となる位置の指定に灯台が使われている点が共通しているのだ。
その13基の灯台(そのほか廃止・撤去されたものが1基、近くまで行けなかったものが1基)の根元(すぐそば)に実際に行ってみた。到達の難易度は入門レベル、初級レベル、中級レベルとさまざまだ。さらに、対岸の灯台が肉眼で見えるかどうかも確認した。その結果を3回に分けて紹介する。
瀬戸内海には東端(本州と四国の間)、南端(四国と九州の間)、西端(九州と本州の間)という3カ所の境界がある。

以下では、東端について詳しく見ていく。
瀬戸内海の東端は、領海法施行令、海上交通安全法施行令が
紀伊日ノ御埼灯台―蒲生田岬灯台
瀬戸内法、瀬戸内法施行令、漁業法施行令が
紀伊日ノ御埼灯台―伊島及び前島―蒲生田岬
と規定している。
伊島(いしま)と前島(まえしま、どちらも徳島県阿南市)は、紀伊日ノ御埼灯台と蒲生田岬灯台を結んだ線上にあるので、実際には同じものを指している。
次の地図を見れば、非常に自然なものであることが納得できると思う。島を除くと日ノ御崎が和歌山県の最西端、蒲生田岬が徳島県の最東端で、両県を結ぶ最短距離(約29km)だからだ。

ただ、国際水路機関(IHO)だけは『大洋と海の境界(Limites des Océans et des Mers)』(1953年発行)で、瀬戸内海の東端を、淡路島を間に挟み
田倉崎―生石鼻、潮崎―大磯崎
と規定している。田倉崎―生石鼻の距離は約10km、潮崎―大磯崎の距離は約8km(淡路島の陸上を含むと合計約40km)で、“狭くなっている場所”を境界とするなら、これもまた「あり得る」とは言える。
ではそれぞれの灯台を順に見ていこう。
紀伊日ノ御埼灯台―蒲生田岬灯台
まずは紀伊半島側の紀伊日ノ御埼灯台(きいひのみさきとうだい、和歌山県日高町)だ。


この灯台は、2回の移転(100~200m)を経て現在あるのは3代目だ。なぜ2回も移転したのかは、上記の記事を参照してほしい。現灯台は探検度ゼロだが、2つの灯台跡は現在たどりづらくなっていて、初代の灯台跡への到達難易度は中級まで上がる。
領海法施行令などが「日ノ御埼灯台」としているのは、このうちの2代目のことだ。「紀伊日ノ御埼灯台(北緯33度52分55秒東経135度3分40秒)」と緯度経度を指示していて、これが2代目の場所と一致するからだ。
とはいえ、初代や3代目であっても瀬戸内海の境界線の位置はほとんど変わらない。領海法施行令などが3代目にあわせて書き替えられていないのはそのためだろう。
現灯台から四国方向を見てみたが、陸地や灯台は判別できなかった。蒲生田岬との間には伊島があるので、蒲生田岬灯台はそもそも見えないはず。蒲生田岬灯台の光達距離は約9kmしかないので、灯光も届かない。
次は対岸の蒲生田岬灯台(かもだみさきとうだい、徳島県阿南市)だ。

灯台の手前には広い駐車場とトイレがあるし、歩く距離はそれほど長くないのだが、最後に急な階段(150段、高低差約40m)があるので、到達難易度は初級レベル。

東方向には伊島があり、さらに紀伊半島もうっすらと見える。紀伊日ノ御埼灯台の光達距離は約40kmあるので、もし伊島の陰でなければ夜に灯光が見えるのだが…。

伊島にも伊島灯台(いしまとうだい、徳島県阿南市)があるので行きたかったのだが、このときは強風で船が欠航する見込みだったので断念した。詳しい経緯は蒲生田岬灯台の記事に書いた。
田倉崎―生石鼻
国際水路機関(IHO)は、本州(紀伊半島)と淡路島を田倉崎―生石鼻で、淡路島と四国を潮崎―大磯崎でそれぞれ結んだ線を瀬戸内海東端としている。
紀伊半島側の田倉崎にあるのが田倉埼灯台(たくらさきとうだい、和歌山県和歌山市)だ。階段を5分ぐらいのぼるだけなので、入門レベルと言えるが、のぼり階段はかなりきつい。


灯台の周りは木に囲まれていて海は見えない。灯台にのぼる手前の海岸からは正面に友ヶ島が見えるほか、左にうっすらと淡路島が見えたが、約10km離れた生石鼻灯台までは識別できなかった。

紀伊半島と淡路島の中間にある友ヶ島は、田倉崎―生石鼻を結ぶ線よりわずかに北にあり、IHOの規定では瀬戸内海の内側にあることになる。
太平洋から大阪や神戸に向かう船舶は、基本的に友ヶ島と淡路島の間の友ヶ島水道(紀淡海峡)を通るため、友ヶ島灯台の初点灯は1872年8月(明治5年6月)とかなり古い。
一方、紀伊半島側(田倉埼灯台)と淡路島側(生石鼻灯台、高埼灯台)が建てられたのは、昭和になってからだ。
生石鼻灯台(おいしのはなとうだい、兵庫県洲本市)は、友ヶ島水道(紀淡海峡)を挟んで友ヶ島灯台の対岸にある。駐車場からすぐのところにあり、探検度は入門レベル。また、灯台の周囲から海は見えない。


近くの展望台からは、友ヶ島がよく見え、島の西端にある友ヶ島灯台も確認できる。その先の陸地の右端は田倉崎と思われるが、田倉埼灯台は見分けることができない。

田倉埼灯台と生石鼻灯台はどちらも周囲に木があるので、昼間は互いに識別できないだろう。ただ、田倉崎―生石鼻の距離は約10kmである一方、田倉埼灯台の光達距離は15km、生石鼻灯台の光達距離は22kmなので、夜は灯光が見えるのではないだろうか。
潮崎―大磯崎
国際水路機関(IHO)は、瀬戸内海東端の淡路島と四国の間は「潮崎―大磯崎で結んだ線」と規定しているが、淡路島側の潮崎(しおさき)には灯台がない。
対岸の大磯埼灯台(おおいそさきとうだい、徳島県鳴門市)はクエスト感あふれ、難易度中級レベルの充実感が味わえる灯台だ。10~20mぐらいの間、しっかりと張られたロープを使わないとのぼれない場所がある。


灯台から東方向を見ると、淡路島の南端、潮崎が見える。ここが(IHOが規定する)瀬戸内海東端の境界線だ。

以上が瀬戸内海東端である。南端と西端についてはこちら。



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