ナギヒコの灯台到達記:瀬戸内海南端
到達:2024年10月~2026年4月
“瀬戸内海”はどこからどこまでか、瀬戸内海と外海(太平洋、日本海)の境界はどこか、ご存じだろうか。
瀬戸内海の範囲は、いくつかの法律や政令(施行令)などによって規定されている。場所はそれぞれ異なることもあるが、ほとんどの場合、境界となる位置の指定に灯台が使われている点が共通しているのだ。
その13基の灯台(そのほか廃止・撤去されたものが1基、近くまで行けなかったものが1基)の根元(すぐそば)に実際に行ってみた。到達の難易度は入門レベル、初級レベル、中級レベルとさまざまだ。さらに、対岸の灯台が肉眼で見えるかどうかも確認した。その結果を3回に分けて紹介する。
瀬戸内海には東端(本州と四国の間)、南端(四国と九州の間)、西端(九州と本州の間)という3カ所の境界がある。

瀬戸内海の南端がどこかは、議論の余地が少ないだろう。四国からは西に細長く伸びる佐田岬半島があり、九州の佐賀関半島との間(豊予海峡、速吸瀬戸:はやすいのせと)が約13.5kmと極端に狭いからだ。
瀬戸内海の南端は領海法施行令、海上交通安全法施行令、漁業法施行令が
佐田岬灯台―関埼灯台
瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)が
佐田岬―関埼灯台
国際水路機関(IHO)の『大洋と海の境界(Limites des Océans et des Mers)』(1953年発行)が
佐田岬―関崎
と規定していて、これらは実質的に同じ場所を指している。

ただ、瀬戸内海環境保全特別措置法施行令(瀬戸内法施行令)だけは
高茂埼―鶴御埼
と、べつの境界線(距離約37km)を規定している。
この2つの境界線に挟まれている海域(豊後水道、宇和海など)は、関さばや関あじに代表される漁業資源が豊富なところだ。“環境”という観点で見た場合、この海域も含めた方が都合がいい、ということではないかと思う。
佐田岬灯台―関埼灯台
佐田岬灯台(さだみさきとうだい、愛媛県伊方町)は観光地として名が通っていて、訪れる人も多いのだが、佐田岬半島の先端まで行くにはそこそこ時間がかかる。
さらに駐車場から灯台まではのぼりくだりのある道を30分弱ぐらい歩く必要がある。遊歩道は整備されていて危なかったり迷ったりする場所はないが、到達の難易度としては初級レベルぐらいはある。

灯台の手前にある椿山展望台からは、佐田岬灯台と豊予海峡(速吸瀬戸)が見える。近くの陸地は高島だろう。この日はあまり天気がよくなかったので、その先に対岸の大分県佐賀関半島はうっすらと見えるだけで、その先端にある関埼灯台は確認できなかった。

次は対岸の関埼灯台(せきさきとうだい、大分県大分市)だ。
関埼灯台の初点灯は1901(明治34年)と古く、半円形の付属舎、というブラントン式の設計が受け継がれている。なお佐田岬灯台の初点灯はもう少し遅く、1918年(大正7年)。


佐田岬半島もよく見える。右は佐田岬半島からも見えた高島。

そして佐田岬灯台もちゃんと見えたし、右側に付属舎があるのもわかる。豊予海峡の狭さ(約13.5km)を実感した瞬間だ。この写真の中央を境に左が瀬戸内海、右がその外(太平洋)ということだ。

高茂埼―鶴御埼
地形的な(相互の距離が狭まっているところ)観点では確かに「佐田岬灯台―関埼灯台」が妥当に思える。だが、漁業資源などの観点からすると、豊後水道や宇和海などを瀬戸内海に含める瀬戸内法施行令の「高茂埼―鶴御埼」というのも一理ある。
豊後水道付近にある主な灯台を次の地図で示す。

高茂埼灯台(こうもさきとうだい、愛媛県愛南町)は愛媛県のほぼ最南端、高知県との県境に近い場所にある。高茂岬は複雑な地形の半島の先にあるので、そこまでクルマで行くのはひと苦労だ(佐田岬ほどではないが)。でも、駐車場からは徒歩5分ぐらい。到達の難易度が入門レベルの灯台だ。


ただ、対岸の鶴御埼は灯台とその周囲の木で見えない。
駐車場からは、北西から西にかけての海がよく見える。中央にあるいくつかの小島の少し左は、方向的には鶴御埼灯台がある場所だが、陸と思われるもの自体が見えなかった。

やはり約37kmという距離では難しいか。鶴御埼灯台の光達距離は約43kmあるので、夜は灯光が見えるかもしれない。
鶴御埼灯台(つるみさきとうだい、大分県佐伯市)は、佐伯市街あたりから東へぐっと伸びた鶴見半島の先端にある。佐伯市街から灯台近くの駐車場まではクルマで1時間近くかかったが、駐車場からは2、3分という、到達の難易度が入門レベルの灯台だ。


展望台から東を見る。条件が良ければ水ノ子島灯台をはじめ、四国の日振島、由良岬、高茂埼などの灯台も見えるのかもしれないが、この日はまったく何も見えなかった。

高茂埼灯台の光達距離は約14km。高茂埼―鶴御埼の距離が約37kmあるので、夜になっても灯光は見えないだろう。
一方、この海域のほぼ中央にある水ノ子島灯台は初点灯1904年(明治37年)3月という古い石造の灯台だ。水ノ子島は豊後水道の真ん中にある小さな無人島で、船をチャーターして行くしかないし、行っても上陸できない。
鶴御埼灯台の近くにある「水の子島海事資料館・渡り鳥館」の前から見た風景が次の写真だ。先ノ瀬灯台(写真中央)の右(写真右寄り)にぼんやり見える白黒の縞が水ノ子島灯台だ(距離は約14km)。

水ノ子島灯台の光達距離は約37kmと長いので、この海域内のどこからでも灯光が見えるだろう。
以上が瀬戸内海南端である。東端と西端についてはこちら。



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